以上のように遺伝子治療には様々な問題点があり、発展途上の段階にあると言える。よって、安全性を確保するため、以下のようなガイドラインが定められている。
・世界でいち早く遺伝子治療の臨床研究が始まった米国では、1985年にNIHはRAC(Recombinant DNA Advisory Committee:組換えDNAアドバイザリー委員会)の中に、GTS(Gene
Therapy Subcommittee:遺伝子治療に関する小委員会)を設け、以下の項目が決定されている。
当面、体細胞遺伝子治療のみ許可すること
個別審議すること
NIHの許可には考慮事項に関するプロトコルの提出が必要であること等
米国での遺伝子治療は、研究プロトコルがRACを通過しなければ実施できない仕組みになっている。
・日本では、平成6年医療機関を対象とした「遺伝子治療臨床研究に関する指針」(厚生大臣告示)と大学を対象とした「大学等における遺伝子治療臨床研究に関するガイドライン」(文部大臣告示)とがあり、厚生省と文部省における合同での審査が行われている。これらのガイドラインの骨子は以下の通りである。
遺伝子治療の対象疾患を、末期ガンなど生命を脅かす疾患、又は生活の質を著しく損なう難治疾患で、他の代替法と比較して遺伝子治療臨床研究を実施することによるメリットがあると予測されるものに限定
治療目的以外の遺伝子導入の禁止
生殖細胞の遺伝的改変の禁止
遺伝子治療の有効性及び安全性の確保
インフォームド・コンセントの確保、等
しかしながら、これらのガイドラインは、今後の臨床研究の進展により、随時、見直しを行う必要があると考えられる。
|