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Q7. |
Btトウモロコシの栽培が、トウモロコシ畑の土壌生態系、及び周辺の植物に影響を及ぼす可能性はあるのか |
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微生物学者のSaxenaらは、Btトウモロコシの地上の落ち葉や花粉ばかりでなく根の滲出液からもBt毒素を検出したと報告している。しかしBt植物の栽培が、実際に土壌生態系や周辺の植物にどのような影響をもたらすのかは示されていない1)、2)。 |
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Btトウモロコシのオオカバマダラの幼虫への影響について |
Bt剤は、土壌中に生息するBacillus thuringiensisというバクテリアが産生するδ−エンドトキシンが鱗翅目の昆虫の腸管内の受容体(receptor)に結合して腸管を破壊することを利用した天敵微生物農薬である(→Q6)。Bacillus
thuringiensisの菌体、あるいは、単離されたδ−エンドトキシンは、米国では1960年代から、日本では1980年代から実用化されており、環境に負荷を与えない生物農薬(Bt農薬)としての長い利用の経験がある。したがって、Bt植物が作出されるかなり前からトウモロコシ畑をはじめとする多くの畑にBt剤が散布されており、土壌中にもかなり浸透していたと推定されるが、土壌生態系や周辺の植物に多大な影響が生じたとの報告はない。
つまり、Bt植物を栽培した場合でも、従来、Bt農薬を作物に散布していた場合と状況に変化はない。したがって、Bt植物の栽培により、従来の農業とは異なり、土壌生態系及び周辺の植物に多大な影響が生じるとは考えにくい。実際、Btトウモロコシの栽培によって多大な影響が生じたとの報告も現在のところはない。
しかし、Bt植物の栽培による生態系影響の可能性、特に、土壌微生物と植物の相互関係については明らかになっていない点が多く、今後さらにデータの蓄積が必要である。 |
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1) D. Saxenaら、Nature, Vol.402, 480, 1999
2) 読売新聞、1999年12月2日
3) 大澤勝次、研究ジャーナル, 21, 3, 79-87, 1998 |
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