1995年12月にNIH所長のVarmusが提出した遺伝子治療の現状評価によれば、それまでに実施された遺伝子治療の臨床研究において、導入遺伝子が原因で疾患が治癒したケースは皆無であると結論された。その後も世界中で遺伝子治療がさかんに行われているが、遺伝子治療の成功例は少数であり、現在も、その有効性は確立されていない。 したがって、遺伝子治療はまだ臨床研究の段階にあり、完成した治療方法ではないため、今後も技術開発の余地が大いにあると言わざるを得ない。
以上のように、遺伝子治療はまだ発展途上の段階にある。したがって、遺伝子治療の有効性が確立されるには時間がかかると思われるが、遺伝子治療によって新しい角度からの治療法が可能になったこともまた確かである。今後、ゲノム解析の結果とあわせて、個人の疾患に応じた、より合理的で科学的な治療法の確立が期待されている1)。したがって、遺伝子治療の臨床研究の成果を詳細に検討し、将来的な遺伝子治療の有効性と応用可能性について慎重に判断していく必要がある。
更新日: 2006年10月25日