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Q10. |
遺伝子組換えナタネ等と近縁種との交雑の可能性について、どう考えればよいのか |
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遺伝子組換え植物の近縁種との交雑については、遺伝子組換えナタネを中心に海外で野外実験が行われている。これまでに花粉の拡散による近縁種との交雑1)、遺伝子組換えナタネからハマダイコンへの遺伝子拡散2)などが確認されている。また、ダイズとツルマメの交雑可能性なども指摘されている3)。
交雑は、遺伝子の拡散(遺伝子汚染)、交雑でできた雑種の雑草化を引き起こす可能性があると指摘されている。 |
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遺伝子組換え植物の交雑性について |
遺伝子組換え植物と近縁種との交雑は実際に起こり得る。
遺伝子組換え植物のうち、日本に交雑可能な近縁種が存在する例としては、ナタネとダイズが挙げられる。ナタネの交雑は遺伝子組換え体の花粉が飛散することにより起こり、雑種形成率は、遺伝子組換えナタネ(Brassica
napus)と近縁種(Brassica campestris)との物理的距離、両者の個体数、気象条件などによって決まる1)。また、ダイズは基本的に自家受粉する植物であるため、花粉が飛散しにくいものの、媒介昆虫が存在すれば、ツルマメとの交雑が起こる可能性も否定できない。
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遺伝子組換え植物の交雑のリスクの考え方について |
以上のことから、遺伝子組換え植物の交雑については、一定の割合で交雑が起こり得るということを前提に考えていく必要がある。遺伝子組換え植物と非組換え植物との交雑については、主に次のような考え方がある。
- 交雑が起こっても導入遺伝子の拡散が起こらなければ問題はない。
(外来遺伝子が導入されても適応度に変化がなければ問題はない。)
- 交雑が起こっても生じた雑種を適切に管理できれば問題はない。
- 自然はありのままの状態が最も望ましく、遺伝子組換え体からの遺伝子流動は原則的に避けるべきである。
野生植物に遺伝子が導入された場合、自然淘汰が起こる。したがって、交雑に伴う遺伝子の拡散、伝播のリスクに注目することが重要になる。
例えば、除草剤耐性遺伝子の場合、除草剤散布下では、耐性種が選択上有利になり遺伝子の拡散が起こるが、除草剤の散布を止めれば選択圧は働かなくなるので、耐性遺伝子の頻度は減少していくことが予想される。また、たとえ耐性遺伝子の頻度が上昇しても、他の除草剤を用いることにより生じた雑種を駆除できるので、遺伝子の拡散リスクを適切に管理できると期待される。
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結論 |
以上の点から、遺伝子組換え体の交雑性については、前記の1、2の考え方を基本として、「遺伝子組換え体の交雑は起こるが、遺伝子が拡散していくリスクがない、あるいは、栽培上は問題がない」ことを明らかにするデータを示していくことが重要である。例えば、導入遺伝子が有利に働く条件(例:除草剤散布下での栽培、遺伝子組換え体と近距離での交雑可能な野生種の自生、交雑可能な近縁種の個体群が遺伝子組換え体と比較して著しく小さいことなど)を人間の管理により回避できることを明示していく必要がある。また、導入遺伝子の拡散によるリスクの可能性については、個別に評価し、対策を講じていくことが重要であると考えられる。
もちろん、その際には3のような考え方があることにも配慮し、ケース・バイ・ケースで遺伝子組換え植物の開放系利用の是非を検討していくことが必要である。
つまり、交雑そのものを問題視するのではなく、1〜3の考え方のバランスをとりつつ交雑により遺伝子が拡散していくプロセスを明らかにし、遺伝子の無制限な拡散を防いでいくことが重要なのである。
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1) A. M. Timmonら、Nature, Vol.380, 487, 1996
2) A. M. Chevreら、Theo. Appl. Genet., Vol.97, 1, 90-98, 1998
3) 山田康之ら、「遺伝子組換え植物の光と影」(学会出版センター)
4) 農林水産省、「組換え農作物早わかりQ&A」 |
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