異種移植において拒絶反応やウィルス感染の危険性を否定できないのは事実である1)。
異種移植で最も大きな問題は、拒絶反応である。拒絶反応には、異種臓器のタンパク質による抗原抗体反応(超急性期免疫拒絶反応)、ドナーの血管内皮細胞の活性化に伴う血栓の形成による臓器不全(遅延拒絶反応)、及び異種臓器の組織の不適合による細胞障害反応(慢性拒絶反応)などが移植直後から時間の経過とともに現れ、異種移植を成立させることが難しいケースが多い。
また、米国FDA(Food and Drug Administration)は、ヒト以外の霊長類からの異種移植は、患者、及び患者と接触する人や公衆に無視できない感染症のリスクを与えることから、ヒト以外の霊長類からの異種移植を禁止することとしている。霊長類以外にも臓器のサイズがヒトに近いブタ臓器の使用が検討されているが、未知のウイルス感染の危険性は同様に存在する。