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Q62. |
「クローン技術」とは何ですか。また、どのようなことに役立つのですか。 |
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クローン技術とは、「クローン」つまり遺伝的に同一な個体を作製する技術であり、古くから農業において使われてきました。
例えば、チューリップの球根、ジャガイモの塊茎、アジサイの挿し木、リンゴ、ヤマイモのむかご(種イモ)による増殖など、種子によらない増殖方法(無性生殖)は、植物の繁殖技術として広く使われています。このようにして作られた個体はクローンであり、遺伝的には親とすべて同じ性質を備えており、品質のそろった農作物、園芸作物などの生産に役立っています。
また、クローン技術の一つとして、植物組織を人工的に増殖させる技術(細胞培養、組織培養技術)が開発され、一部のほ乳動物においても、遺伝的に同一なクローン個体を作製する技術が可能となってきました。 畜産分野においては、クローン技術は家畜の改良を進めるのに有効な手段の一つであり、生産性の向上、品質の向上という効果が期待されます。 例えば、
- 乳量が多く、飼料効率に優れた生産能力の高い牛を多数生産・確保すること
- 肉質が良く、飼料効率に優れた牛を多数生産・確保すること
に役立つと考えられています。
いずれにしても、コストの低減と品質の向上を目指した優良種畜の増殖と家畜の改良を通じ、畜産の国際競争力を高めるための有効な手段です。このほか、畜産分野以外でも動物のクローン技術は、
- 医療分野をはじめ多くの分野において、同じ遺伝子を持った実験用動物の大量生産手段
- 遺伝子組換え技術との組み合わせによる病気の治療に必要な医薬品(タンパク質)の大量製造手段
- 絶滅の危機に瀕している希少動物などの保護
- 再生の手段
などへの利用が期待されています。
先進諸国でも同様な目的でクローン技術の研究・開発が行われています。最近ではヒトへのクローン技術の応用について新聞などで報道されていますが、クローン技術によりヒトの個体を作成することは、安全面、倫理面の問題から、国際的に規制される流れにあります(→Q96)。
参考資料:
クローン牛についてしっていますか?
早わかりQ&A 集(農林水産省農林水産技術会議事務局・畜産局) |
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Q63. |
クローン牛はどのように作られるのですか。 |
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クローン技術には、ドナー細胞として用いる細胞の種類によって、次の2つがあります。
- 受精後発生初期の胚(精子と卵子が受精した受精卵が、その後細胞分裂を続けていく初期の段階)の細胞を用いる方法(受精卵に由来する細胞からクローンを作出する技術とい
う意味で「受精卵クローン技術」と呼ばれています。)
- 皮膚や筋肉などの体細胞を用いる方法(体細胞からクローンを作出する技術という意味で「体細胞クローン技術」と呼ばれています。)
それぞれのクローン技術の具体的な内容は、次のとおりです。
- 受精卵クローン技術は、受精後5〜6日目で、16〜32細胞へと細胞分裂が進んだ状態の受精卵(胚)をひとつひとつの細胞(割球)に分けます。
割球のひとつひとつをそれぞれレシピエント卵子へ核移植・細胞融合し、培養した後、仮親牛へ移植・受胎させ、お互いにクローンである牛を作製します。
こうして生まれた受精卵クローン牛同士は、遺伝的に同一なものであり、いわば、人工的 に一卵性の双子や三つ子を産ませる技術といえます。 この技術によって我が国でも、1990(平成2)年に受精卵クローン牛を誕生させることに成功しました。
- 体細胞クローン技術は、クローンを作出したい牛の皮膚や筋肉などの体細胞を培養し、ドナー細胞とします。その後は、レシピエント卵子への核移植等、受精卵クローン技術とほぼ同じ方法により、クローン牛を作製します。こうして作製された牛は、ドナー細胞を提供した牛(ドナー牛)と同じ遺伝子の組み合わせを持ちますので、ドナー牛のクローンであり、さらに、同じ個体のドナー牛の体細胞から複数の子牛を作製すれば、作製された子牛同士もクローンです。
この技術により、1996(平成8)年7月、イギリスのロスリン研究所で、雌羊の体細胞を使ったクローン羊「ドリー」が世界で初めて誕生し、世界の注目を集めました。また、我が国でも、1998(平成10)年7月、近畿大学農学部が石川県畜産総合センターの協力により、成体の体細胞由来のクローン牛(「のと」と「かが」)を誕生させることに世界で初めて成功しました。
(用語) |
1.ドナー細胞 |
クローンを作出したい動物の細胞のこと。 |
2.レシピエント卵子 |
ドナー細胞を受け入れる側の卵子で、受精していない卵子から核を取り除いたもの。 |
参考資料:
クローン牛についてしっていますか?早わかりQ&A集(農林水産省農林水産技術会議事務局・畜産局) |
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Q64. |
クローン牛の研究は、どこで行われているのですか。 |
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受精卵クローン牛について
受精卵クローン牛は、1990(平成2)年8月に我が国で初めて誕生して以来、これまで34の試験・研究機関等で501頭が誕生しています。なお、世界で初めて受精卵クローン牛を誕生させたのは米国で、1987(昭和62)年のことでした。
体細胞クローン牛について
体細胞(成体由来)クローン牛は、1998(平成10)年7月に我が国において、世界で初めて誕生して以来、これまで18の試験・研究機関等で98頭が誕生しています。これまでクローン牛を誕生させた試験・研究機関は、以下のとおりです。
クローン牛研究を実施している試験・研究機関一覧
受精卵クローン牛 |
体細胞クローン牛 |
試験・研究機関等名 |
出生頭数 |
試験研究機関等名 |
出生頭数 |
(農林水産省関係) |
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(農林水産省関係) |
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畜産試験場 |
6 |
畜産試験場 |
2 |
草地試験場 |
6 |
家畜改良センター |
14 |
北海道農業試験場 |
1 |
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|
家畜改良センター |
59 |
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20 |
(都道府県関係) |
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(都道府県関係) |
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北海道立新得畜産試験場 |
22 |
北海道立新得畜産試験場 |
1 |
青森県畜産試験場 |
18 |
青森県畜産試験場 |
1 |
宮城県畜産試験場 |
27 |
宮城県畜産試験場 |
5 |
山形県農業研究研修センター7 |
7 |
富山県畜産試験場 |
3 |
新潟県農業総合研究所畜産研究センター |
2 |
山梨県酪農試験場 |
4 |
石川県畜産総合センター |
4 |
奈良県畜産試験場 |
4 |
群馬県畜産試験場 |
S |
山口県畜産試験場 |
1 |
栃木県酪農試験場 |
25 |
徳島県畜産試験場 |
2 |
千葉県畜産センター |
9 |
大分県畜産試験場 |
8 |
山梨県酪農試験場 |
3 |
宮崎県畜産試験場 |
2 |
静岡県畜産試験場 |
1 |
鹿児島県肉用牛改良研究所 |
18 |
愛知県農業総合試験所 |
1 |
|
|
岐阜県肉用牛試験場 |
8 |
|
|
愛知県農業総合試験場 |
1 |
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|
奈良県畜産試験場 |
21 |
|
|
鳥取県畜産試験場 |
1 |
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|
島根県立畜産試験場 |
1 |
|
|
岡山県総合畜産センター |
1 |
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|
広島県畜産技術センター |
21 |
|
|
山口県畜産試験場 |
11 |
|
|
徳島県畜産試験場 |
6 |
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長崎県畜産試験場 |
1 |
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熊本県農業研究センター畜産研究所 |
5 |
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大分県畜産試験場 |
5 |
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宮崎県畜産試験場 |
14 |
(生物系特定産業技術研究推進機構) |
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鹿児島県肉用牛改良研究所 |
18 |
近畿大学 |
21 |
(民間企業等) |
|
(民間企業等) |
|
小岩井農牧葛Z術研究センター |
46 |
(社)家畜改良事業団家畜バイテクセンター |
1 |
全農飼料畜産中央研究所ET センター |
72 |
小岩井農牧(株)技術研究センター |
3 |
(株)ミック那須事業所 |
53 |
(株)ミック那須事業所 |
3 |
雪印乳業(株)受精卵移植研究所 |
16 |
雪印(株)受精卵移植研究所 |
5 |
合計 |
501 |
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98 |
資料:農林水産省農林水産技術会議事務局調べ(1999(平成11)年9月30日現在)
参考資料:
クローン牛についてしっていますか?早わかりQ&A集(農林水産省農林水産技術会議事務局・畜産局) |
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Q65. |
クローン牛の食肉及び牛乳が出荷されたのは、いつからですか。 |
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受精卵クローン牛が食肉として出荷されたのは1993(平成5)年からです。
(1990(平成2)年8月に生まれた牛が1993(平成5年)3月に出荷)
受精卵クローンの牛乳が出荷されたのは1995(平成7)年からです。
(1993(平成5)4月に生まれた牛が1995(平成7)年5月から1996(平成8)3月まで生乳出荷)。
体細胞クローン牛については、まだ出荷されたことはありません。
参考資料:
クローン牛についてしっていますか?早わかりQ&A集(農林水産省農林水産技術会議事務局・畜産局) |
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Q66. |
クローン牛の食品としての安全性に問題はないのですか。 |
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食品としての安全性に問題があるとは考えられません。
家畜クローン技術は、核移植等の技術を用いて遺伝的に同一なクローン家畜を作成する技術であって、遺伝子の改変・操作を行なうものではありません。いわば、一卵性の双子や三つ子を人工的に作る技術、植物でいえば、挿し木や成長点培養に当たる技術といえます。したがって、クローン牛は、通常の牛と変わらないと考えられます。
受精卵クローン牛肉については、一般の牛肉と同様に生体に異常がないか、内臓・肉等に異常がないかなど、食品衛生上の検査が行なわれており、一般の牛の検査結果と差がありません。また、肉の品質についても検査・格付けが行なわれています。
さらに、国際的にも受精卵クローン牛の食品としての安全性に問題があるという指摘はありません。
(用語) |
1.成長点培養 |
植物の組織を培養する方法の1種で、茎頂培養とも呼ばれます。勢い良く伸長する茎の先端にある成長点から小さな組織を切りだして培養すると、植物体が再生してきます。この方法を利用するとウイルスに感染していない健全な苗をつくることができるので、サトイモ、ジャガイモ、イチゴ、ユリなど多くの農作物で利用されています。 |
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Q67. |
クローン牛は、死産等の率が高く、生まれた牛は虚弱で特別な飼料や医薬品等を使用した飼養を行っているというのは本当ですか。 |
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受精卵クローン牛の死産等の発生率すなわち死産と生後直死をあわせた割合は、15.2%であり、体細胞クローン牛の死産等の発生率は、22.8%となっています。(1999(平成11)年3月31日現在までのデータによる)。一方、国内で一般に飼養されているホルスタイン種の死産等の発生率は、5.3%との報告例があります。
クローン牛の死産等の発生率が高い理由としては、クローン胚作出に適した培養技術が十分に確立されていないことなどがあげられます。
今後は、クローン技術を一層改善することにより、死産等の発生率を減少させて いくことが可能になるものと考えられます。
普通に生まれてきたクローン牛は、一般の牛と同様に健康であり、特別な飼料や医薬品等の投与によって健康を維持する必要は全くありません。したがって、飼養管理において、いわゆる医薬品漬け抗生物質やホルモン剤などといったことはなく、
一般の牛と全く同様の飼養管理が行われています。
(用語) |
1.死産 |
胎子が母体外で生活能力を持つ期間すなわち最短妊娠期間(胎齢250日程度)に達したのち、死亡して産まれてきたもの。 |
2.生後直死 |
生きて分娩された後、まもなく(概ね24時間以内)死亡したもの。 |
参考資料:
クローン牛についてしっていますか?早わかりQ&A集(農林水産省農林水産技術会議事務局・畜産局) |
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Q68. |
農家がクローン技術により同じ遺伝子しか持たないクローン牛群を飼うのは、ひとつの病気に多くの牛が感染したときに、一般の牛を飼うより被害が大きくなることはありませんか。 |
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クローン牛は同じ遺伝子をもつため、特定の病気が蔓延する可能性は否定できません。
遺伝的画一性の問題が生じた著名な例には、韓国で、収穫の多い特定の系統 のイネを広範囲に植えたため、病気により不作が広がったという例があります。これは、多収性であるが、イモチ病に弱い系統が韓国内で盛んに作付けされたため、
イモチ病の発生により壊滅的な打撃が受けたものです。
韓国の例は同じ性質を持っていたために、生産の不安定をもたらした例でありますが、このことは、技術自体の問題というよりも、技術の使用法あるいは経営の問題として考えるべきです。
具体的には、クローン牛を供給する側が1種類のクローン牛に偏ることのないように配慮したり、それを受け入れる農家においてもクローン牛を飼養するときに、1種類のクローン牛に偏らないように数種類のクローン牛からなる牛群を造成したりして、リスクの分散に対する配慮が必要になると考えられます。
参考資料:
クローン牛についてしっていますか?早わかりQ&A集(農林水産省農林水産技術会議事務局・畜産局) |
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Q69. |
試験場からクローン牛が、食肉として出荷されることには、問題はないのですか。 |
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農林水産省で安全確認をしているので問題はありません。
農林水産省の試験・研究機関で作出された農畜産物は、家畜に限らず農作物も含め研究に必要でなくなったものは、物品管理法に従って取り扱い、経済的価値を有するものは売り払うこととしています。この場合、医薬品の投与試験といったものに用いられたものが出荷されることはありません。
また、クローン牛を出荷し、食肉として利用される際にも、一般の牛と同様に、生体に異常がないか、内臓・肉等に異常がないかなど、さらに、食品衛生上の検査が行われています。
参考資料:
クローン牛についてしっていますか?早わかりQ&A集(農林水産省農林水産技術会議事務局・畜産局) |
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Q70. |
海外におけるクローン家畜の生産および利用の状況はどうなっているのですか。 |
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受精卵クローン牛については、アメリカ及びカナダでは一般農家においても飼養されており、これらの家畜から生産された肉や乳を一般市場に出荷することについて規制はなく、表示の義務はありません。
ヨーロッパではフランスにおいて受精卵クローン牛の肉が一般市場に出荷されたことがあります。なお、イギリスではクローン技術は主として遺伝子組換え技術 による有用物質生産等のための研究に利用されており、このような食肉生産以外
を目的として生産されたクローン牛の生産物は出荷されていません。
体細胞クローン動物については、イギリス(羊)、アメリカ(牛、マウス)、フランス(牛)等、数カ国において作出に成功しているものの、現時点ではわが国と同様、成体には至らず、体細胞クローン動物の肉や乳が流通した実績はありません。
参考資料:
クローン牛についてしっていますか?早わかりQ&A集(農林水産省農林水産技術会議事務局・畜産局) |
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Q71. |
クローン牛の肉には、消費者側が買う、買わないの選択をするために表示をする必要があるのではないですか。 |
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受精卵クローン牛は、食品としての安全性に問題はありません。しかし、消費者からは、安心や選択に資するための表示等を求める声も寄せられています。
このため、食肉等の生産・流通・消費の実態にも留意しながら、受精卵クローン牛についての適切な情報提供を行うため、多面的な検討を行っているところです。
参考資料:
クローン牛についてしっていますか?早わかりQ&A集(農林水産省農林水産技術会議事務局・畜産局) |
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Q72. |
クローン技術に対して倫理上の問題はないのですか。 |
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クローン技術については、1997年2月の英国における体細胞クローン羊の誕生が報告されて以来(誕生は1996年7月)、ヒトに応用された場合の倫理上の問題等に関し、各国で議論されるようになり、世界的に見て、クローン技術のヒトへの適用は禁止される方向にあります(→Q96)。
わが国でも、内閣総理大臣の諮問機関である科学技術会議において今後の研究の進め方等について議論され、1997(平成9)年8月に、「ライフサイエンスに関する研究開発基本計画」
において、ヒトのクローン個体の作製は実施すべきではないが、動物のクローン個体の作製は、畜産、科学研究、希少種の保護等において、大きな意義を有する一方で人間の倫理の問題等に直接触れるものではないことから、情報公開を進めつつ適宜推進するという基本的な方針が出されました。
農林水産省ではこの方針に基づき、適宜、プレスリリース、インターネット等で研究についての情報を公開しながら、家畜クローンの研究を行っています。
また、科学技術会議生命倫理委員会のクローン小委員会は1999年11月に「クローン技術を 用いたヒト個体の産生には人間の尊厳の侵害等から重大な問題があり」、また、「キメラ個体や
ハイブリッド個体についてはヒトという種のアイデンティティを曖昧にする生物を作り出すものであり」更なる弊害を有するため、罰則を伴う法律等によって禁止するための措置を講じるべきとの報告書をまとめ、2000
年2月現在、これを受けて法制化(「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案(仮称)」)の準備が進められています。
(用語) |
1.キメラ個体 |
普通の動物の体は1つの受精卵が分裂してできているので、体内に存在する細胞は基本的に同一の遺伝子をもっています。これに対して遺伝的に異なる複数の系統の細胞が1つの個体内に存在するものをキメラと呼びます。例えば、ヤギとヒツジの間で受精初期の細胞を混合し、そこからヤギとヒツジの細胞をもったキメラ個体が作られています。 |
2.ハイブリッド個体 |
いわゆる雑種のことをいいます。具体的には、ある動物の卵子に他の動物種の精子を融合させるなどの方法により作られた個体のことを指します。キメラ個体が体内に遺伝的に異なる系統の細胞をもつのに対し、ハイブリッド個体の細胞はすべて遺伝的に同一になります。
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