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Q30. |
遺伝子組換え農作物が組み換えていない農作物と自然交配して、組換えられた遺伝子が周囲の生物に広がっていくことはないのですか。 |
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遺伝子組換え農作物と組み換えていない農作物、特に遺伝子組換え農作物と近縁の農作物との交配は当然起こります。組換えられた遺伝子が広がるには次のような条件が必要なので、組換えられた遺伝子を交配により持った植物が、自然界で広がっていくかどうかは、また別の問題です。
- 遺伝子組換え農作物の周囲にその作物と近縁で交配が起こるような植物が存在すること。
- 自然交配で生じた雑種が自然界でさらに広がっていくこと。
2.の条件が必要なのは、自然界では、その環境に適応し、有利なものだけが生き残る淘汰が起こると考えられるからです。例えば、除草剤耐性の遺伝子が組換えていない農作物に入ったとします。しかし、たとえ除草剤耐性遺伝子を持っていたとしても、その環境で除草剤が
用いられていなければ、除草剤耐性が有利な要素ではなくなります。このような場合には、除草剤耐性遺伝子の割合は減っていくと予想されます。
これまで遺伝子組換え農作物が栽培される以前にも、除草剤を用いていたために、天然に生じた突然変異によって除草剤への耐性遺伝子を持っていた農作物は存在していましたが、
除草剤耐性の遺伝子が周囲に拡散していったという例はありません。
しかし、自然交配による組換え遺伝子の拡散の可能性に注意することは重要です。そのような事態を避けるためにも、遺伝子組換え農作物の栽培管理をしっかりと行い追跡調査を続ける必要があると考えられています。 |
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Q31. |
遺伝子組換え農作物の環境に対する影響は、どのように確かめられているのですか。 |
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環境に対する影響については、農林水産省の「農林水産分野等における組換え体の利用のための指針」に基づき安全性が確認されます。農作物の開発者は、利用する農作物や遺伝子の性質を明らかにし、遺伝子組換えによって作られた農作物について、隔離圃場(フェンスで区分された圃場)において試験的な栽培を行い、花粉の飛散性や交雑など他の生物に及ぼす影響を含めて環境への影響を調べます。評価項目は作物の性質を考慮して決定されますが、代表的な項目は次の通りです。
○評価項目の例
- 遺伝子組換え農作物の生育状況(非組換え農作物と差があるかどうか)
- 繁殖に係わる項目:交雑率、花粉の寿命、花粉の飛散距離、花粉の受精能力等
- 有毒物質の生産性 ・土壌微生物相への影響
- 導入された遺伝子の存在様式と遺伝様式 等
その結果が農林水産省に提出され、審査の結果、環境に対する安全性が確認されたものが、これまでの農作物と 同じように一般の圃場でも栽培又は輸入できる仕組みとなっています。
我が国における遺伝子組換え農作物の環境に対する安全性の確認状況
(一般の圃場での栽培又は輸入が可能となっているもの)
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農作物 |
開発国 |
確認した年 |
農作物 |
開発国 |
確認した年 |
ウィルス病に強いトマト |
日本 |
1992 |
除草剤の影響を受けないいトウモロコシ(2 種類) |
米国 |
1997 |
ウィルス病に強いイネ(日本晴) |
日本 |
1994 |
害虫に強いトウモロコシ |
米国 |
1997 |
ウィルス病に強いイネ(キヌヒカリ) |
日本 |
1994 |
除草剤の影響を受けないワタ(2 種類) |
米国 |
1997 |
ウィルス病に強いペチュニア |
日本 |
1994 |
低タンパク質のイネ |
日本 |
1998 |
アレルギー原因物質の含有量が少ない低アレルゲンイネ(キヌヒカリ) |
日本 |
1995 |
除草剤の影響を受けないナタネ(2 種類) |
カナダ |
1998 |
日持ちの良いトマト |
米国、日本 |
1996 |
色変わりカーネーション |
オーストラリア,日本 |
1998 |
ペクチンを多く含むトマト |
米国、日本 |
1996 |
除草剤の影響を受けないトウモロコシ |
米国 |
1998 |
除草剤の影響を受けない大豆 |
米国 |
1996 |
害虫に強く、除草剤の影響を受けないワタ |
米国 |
1998 |
除草剤の影響を受けないナタネ(3 種類) |
カナダ |
1996 |
色変わりトレニア |
日本 |
1998 |
ウィルス病に強いメロン |
日本 |
1996 |
害虫に強いアズキ |
日本 |
1999 |
ウィルス病に強いトマト |
日本 |
1996 |
灰食カビ病に強いキュウリ |
日本 |
1999 |
日持ちの良いカーネーション |
オーストラリア、日本 |
1996 |
除草剤の影響を受けない大豆 |
米国 |
1999 |
害虫に強いトウモロコシ(3 種類) |
米国 |
1996 |
高オレイン酸大豆 |
米国 |
1999 |
除草剤の影響を受けないナタネ(5 種類) |
カナダ |
1997 |
除草剤の影響を受けないトウモロコシ |
米国 |
1999 |
ウィルス病に強いトマト |
日本 |
1997 |
除草剤の影響を受けず、 害虫に強いトウモロコシ(2 種類) |
米国 |
1999 |
害虫に強いワタ |
米国 |
1997 |
色変わりカーネーション |
オーストラリア,日本 |
1999 |
色変わりカーネーション |
オーストラリア、日本 |
1997 |
日持ちの良いカーネーション |
オーストラリア,日本 |
1999 |
ウィルス病に強いイネ(日本晴) |
日本 |
1997 |
害虫に強いワタ |
米国 |
1999 |
除草剤の影響を受けず、害虫に強い トウモロコシ(2 種類) |
米国 |
1997 |
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参考資料:組換え農作物早わかりQ&A (農林水産省農林水産技術会議事務局) |
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Q32. |
除草剤の影響を受けない農作物が雑草化したり、他の雑草と交雑すると、除草剤耐性の雑草ができることはありませんか。 |
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現在認められた遺伝子組換え農作物は農林水産省の指針(ガイドライン)に基づき確認され ており、その可能性はありません。
遺伝子組換え農作物については、隔離圃場で花粉の飛散性・使う農作物や遺伝子の性質・近縁種との交雑性・栽培する環境・利用する目的等について評価を行っています。その結果、
環境へのマイナスの影響がないことを確認した上で栽培が認められます。また、現在栽培されている作物は長年の改良の結果、雑草として生き残る能力はほとんど失われているので、栽培環境下でしか生息できないと考えられます。万が一雑草化しても他の種類の除草剤で枯らせることができます。具体的に示すと次のとおりです。(1)大豆
自家受粉する植物なので、交雑可能な近縁種のツルマメが周辺にあっても、ヒトの手による強制的な受粉を行わない 限りは交雑して種をつけないことが実験で確認されています。(2)トウモロコシ
風によって花粉が運ばれて受粉する植物なので、周辺にトウモロコシや交雑可能な近縁種があれば、交雑が起きま す。しかし、トウモロコシ栽培はF
1 種(→Q36 )であり、毎年栽培するごとに種子を更新する必要があるため農家が採種 して翌年の種として使われることはありません。また、交雑可能な野生植物は日本には存在しません。
トウモロコシの野生種はメキシコ、中央アメリカ産のテオシントと呼ばれる植物と考えられています。この植物は現在自 生地が急速に減少しています。したがってテオシントの自生地で遺伝子組換えトウモロコシを栽培する場合には当然交
雑に対する配慮が必要と考えられます。遺伝子組換えトウモロコシが大規模に栽培されている米国にはテオシントは自 生していません。(3)ナタネ
虫によって花粉が運ばれて受粉する植物なので、近縁種のカラシナ、アブラナがあれば、交雑することがあります。しかし、野外試験から花粉が飛ぶ範囲は数m
と狭いことが分かっており、また交雑により種子ができることもほとんどないため、自然環境下では安定的に生存することが難しいと考えられます。さらに、ナタネはこれまでに我が国に種子の形態で30年近く輸入されていますが、これが輸送の途中でこぼれ落ちるなどして雑草化したという報告はありません。
(4)ワタ
自家受粉する植物なので、人の手による強制的な受粉を行わない限りは自然交雑により種をつけることはほとんどないと考えられています。また、交雑可能な植物は日本には存在しません。米国などではワタと交雑する近縁種が存在するので、そのような土地で栽培する場合は、交雑に対する配慮が必要になると考えられます。
参考資料:
組換え農作物早わかりQ&A(農林水産省農林水産技術会議事務局)
遺伝子組換え食品Q&A(日本国際生命科学協会) |
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Q33. |
殺虫剤耐性を持つ害虫が 発生することはありませんか。 |
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害虫耐性遺伝子組換え植物には、害虫を殺すタンパク質(Bt タンパク質)というもhのを使っています。このタンパク質は、化学合成殺虫剤よりも耐性をもつ害虫が発生することはないと言われており、実際に発生した例も報告されていません。それでも、耐性を持つ害虫が発生する可能性は完全には否定できません。このタンパク質を利用した遺伝子組換え植物は、農家の人にとっては、今まで10
回以上まかなければならなかった殺虫剤散布が1,2回で済むので、省力化につながり、環境影響も大幅に少なくなります。
そこで、この遺伝子組換え植物を長く使うことができるように、米国の環境保護庁が中心になり、殺虫剤耐性の害虫の発生を防ぐ対策が作物ごとに決められています。例えば、遺伝子組換え植物と組換えていない植物を一緒に栽培して耐性の害虫だけが増えないようにしたり、遺伝子組換え植物中の害虫を殺すタンパク質の量を増やしたり、害虫を殺すタンパク質を何種類か入れて、耐性害虫の発生を防いでいます。
(用語) |
1.Bt タンパク質 |
Bt タンパク質は土壌中に生息するガやコガネムシの天敵微生物であるバチルス菌(学名Bacillus thuringiensis )が作るものです。Bt
という名前はバチルス菌の学名の頭文字をとったものです。このタンパク質は昆虫の中でも特定の種にのみ作用して殺すという特異的なものであり、ヒトを含むほ乳類には害は全くありません。 |
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Q34. |
害虫耐性の植物により昆虫がいなくなり、生態系に異変をもたらしませんか。 |
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害虫耐性の植物には、一般にBt タンパク質と呼ばれる殺虫タンパク質(害虫を殺すタンパク質)を作る遺伝子が組み込まれています。この殺虫タンパク質は、ガやコガネムシなどの特定の昆虫にのみ作用します。それ以外の昆虫に影響が及ぶことはありません。
例えば、Bt トウモロコシの場合の害虫は、アワノメイガと呼ばれるガの一種です。トウモロコシ以外に住み付くものでは、他の菜類のアオムシ、コナガ、ヨトウムシ、リンゴのハマキムシ、サクラのアメリカシロヒトリ、茶のコカクモンハマキ、ツバキのチャドクガ等があります。しかし、自然界の昆虫は、基本的に自分が食べる植物の種類がはっきり決まっており、特定の植物以外は餌にしません。ですからリンゴのハマキムシがトウモロコシを食べに行くということはありません。つまり、Bt
トウモロコシの場合、基本的に駆除されるのはアワノメイガのみです。アワノメイガは、茎の内部にすみつくため、これまで大変防除が困難な害虫でした。
また、Bt タンパク質は組換え体以外にも、生物農薬として、70年以上前から世界中で利用されています。生物農薬は、従来の化学農薬と違って生態系を傷めない農薬としての利用が定着しています。したがって、生物農薬と同じBt
タンパク質を含む組換え体は、むしろ化学農薬による生態系への影響を防ぐ技術であると考えられます。
(用語) |
1.Bt タンパク質 |
Bt タンパク質は土壌中に生息するガやコガネムシの天敵微生物であるバチルス菌(学名Bacillus thuringiensis )が作るものです。Bt
という名前はバチルス菌の学名の頭文字をとったものです。このタンパク質は昆虫の中でも特定の種にのみ作用して殺すという特異的なものであり、ヒトを含むほ乳類には害は全くありません。 |
2.生物農薬 |
生物農薬は化学的に合成された化学農薬とは異なり、自然界にもともと存在する微生物などを農薬として用いるものです。上のバチルス菌のように、自然界には特定の生物を殺す作用をもった細菌や微生物がたくさん存在します。殺す側と殺される側の組み合わせは、非常に限られているので、この関係を利用すれば、他の生物には影響を与えず、特定の害虫だけを殺せる農薬ができます。
したがって一般に生物農薬は従来の農薬よりも環境への影響が少ない農薬といえます。実際は、バチルス菌を生きたまま、あるいは死んだ状態で製剤化し、散布します。 |
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Q35. |
除草剤耐性作物によって農薬使用量が増えることはないですか。 |
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これまで、除草剤耐性植物が多く栽培されているアメリカなどで、除草剤の使用量が増加したという報告はなく、むしろ低下している傾向にあります。アメリカでは、除草剤の影響を受けない大豆の栽培により、除草剤の使用量が1エーカー当たり20%程度減少したとの報告がなされています。
現在、開発されている除草剤耐性植物の多くは、除草剤グリホサートやグルホシネートの耐性遺伝子を導入した植物です。これらの除草剤は、植物の生育に必要なアミノ酸(→Q1、用語解説)の合成経路を遮断して、除草作用を示すものです。また、この除草剤の主成分は、土壌に接触すると水と炭酸ガスに分解されて、土壌に残留しにくいことが明らかになっています。
これらの特徴から、有機塩素系を中心とする化学農薬に比べて、除草剤耐性の雑草が生じにくいものです。
薬量を増やせば効果が高まる従来の化学農薬と違って、薬量を増やしても除草効果は変わりません。したがって、一定量の薬をまけば十分で、必要以上に薬量を増やすことはありません。除草剤耐性雑草の除草を行うには、別の種類の除草剤
を利用することになります。
参考資料:
大澤勝次「遺伝子組換え作物への不安と疑問」
「組換え農作物早わかりQ&A」(農林水産省農林水産技術会議事務局) |
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Q36. |
遺伝子組換え農作物から採った種をまいたらどうなるのですか。 |
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遺伝子組換え農作物から採った種子をまけば、親の代と同じように作物が育ちます。農作物に導入された遺伝子は基本的には遺伝すると考えられますが、遺伝
しない場合もありますし、代を重ねていくことで脱落する場合もあります。したがって、遺伝子組換え農作物から採った種をまいた場合も、非組換え農作物を栽培する場合と同様にきちんと管理して栽培していくことが重要です。
遺伝子組換え農作物は、企業が多額の研究費を投じて開発したものです。そのため、その権利が手厚く保護されており、また厳重に管理されています。そのため、容易に自家採種(農家が栽培した農作物から種子をとって再び翌年栽培すること)が行えないような仕組みが作られています。また、多くの作物でF1化が進め られていますから、こっそり自家採種を行ったとしても、次世代では、目的の優良 な形質を発現しない、言い換えれば商品価値のない作物ができてしまいます。
(用語) |
1.F1 |
一代雑種、ハイブリッド種ともいい、遺伝的性質の異なる個体同士を組み合わせることにより、その雑種が最も有効な性質をもつよう にしたものです。F1
種からさらに種子をとって育てても、様々な性質をもった個体が生じ、目的の性質をもたない農作物もできてしまう ので、経済的な利点がなくなります。したがって農家は毎年栽培するごとにF1種子を購入して品質を維持します。 |
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Q37. |
遺伝子組換え技術により、環境に対して予期せぬ影響が現れることはないのですか。 |
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環境への長期的な影響の一つとして、遺伝子組換え農作物の栽培が広がること により、生物多様性が失われる可能性が指摘されています。具体的には、組換え体が近縁種と交雑することによって、人為的に導入された遺伝子が野生集団に広
がったり(遺伝子汚染と呼ばれることもあります)、組換え体が広がるにしたがって、各地の野生種が失われる可能性が考えられます。しかし、これは、通常の育種な どで改良された作物を含むすべての作物について言えることです。また、実際には、遺伝子組換え農作物の環境影響評価を実施して、問題のない作物のみが日本では栽培されています。
このような事態が起こる可能性は非常に低いと考えられますが、念のため、組換え体の栽培について、管理とモニタリング(追跡調査)をしっかり行っていくこと が重要です。そして、組換え体に関する知識と経験を積み重ねていくことが重要であると考えられます。
上で述べた以外の環境影響の懸念についても、管理とモニタリング(追跡調査) を行うことで、1つ1つ検証を行っていくことが重要です。 現在、組換え体の環境への影響についての意識が高まり、農林水産省を中心に環境保全のために、より良い栽培安全性の評価手法を検討していくこととされています。 |
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