|
Q38. |
遺伝子組換え技術を使うと消費者にどんなメリットがあるのですか。 |
|
|
|
|
遺伝子組換え技術は、食品の風味を改善したり、より栄養価の高い食品を作ったり、食品の機能性を高めたり、また食品の生産性を向上させるなど、私達消費者にもさまざまなメリットをもたらします。具体的には次のような例があります。
- 現在米国で販売されているフレーバーセーバートマトは、作物の熟期に係る遺伝子の働きを調整することによって、流通過程でトマトが腐ってしまうことを防ぐことを可能にしました。畑で出荷直前まで成熟させることが可能になったことで、畑で熟した美味しいトマトを食べることができるようになりました。
- コレステロールを下げる働きがあることが報告されているオレイン酸の含有量を増加させ、より健康に良い脂肪酸組成を持つように改良された大豆も、米国では既に商品化されています。
- 食品中のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)の含有量が少ない農作物は、米などで研究が進められています。これが実用化されれば食品アレルギーの患者さんには大きなメリットがあ
ります。
- 毎日の食事を通して貧血を防ぐことを目標に、お米の鉄分を増やす研究も進められています。 このような鉄分の多い米は貧血予防に有効です。
このような消費者個人個人へのメリットに加えて、私たち全体への大局的なメリットもあります。遺伝子組換え技術を利用することによって、私達の食糧を安定的に供給することが出来
るようになります。病害虫に対する抵抗性を向上させた作物は、農薬の散布量を減らし、環境を保全しながら病害虫による収量や品質の低下を防ぐ有効な手法です。また将来は、遺伝子組換え技術によって、塩害や冷害で現在は作物を栽培できない地域でも作物が栽培できるようにする取り組みも行なわれています。
参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A(日本国際生命科学協会) |
|
|
Q39. |
遺伝子組換え技術を使うと農家にどんなメリットがあるのですか。 |
|
|
|
|
除草剤や殺虫剤の散布回数が減るので、薬品代や薬品を撒くために必要な人件費などの費用が減り、さらに害虫や雑草による収穫や品質の低下も避けられます。また、薬品の散布にと
もなう重労働も軽減されます。
[害虫抵抗性作物]
害虫による被害で作物の収量が減少しないように、通常は殺虫剤をまきます。しかし、殺虫剤をまいても防除しづらい害虫もあります。その一例がトウモロコシを食害するアワノメイガと呼ばれるガの一種です。この虫はトウモロコシの茎の中を食害するので、殺虫剤をまいても効果が薄く、毎年多大な被害を与えています。アメリカでは、3,237万ヘクタールのトウモロコ
シ畑のうち、およそ75%がアワノメイガの食害を受けており、殺虫剤を散布しても半数以下のアワノメイガしか防除できず、収量の低下は年によって異なりますが6〜30%に及ぶと言われています。しかし遺伝子組換えにより、細菌の一種、Bacillus
thuringiensis のBt タンパク質生産遺伝子(→Q33, Q34)を取り出し、トウモロコシに導入するのに成功したので、この品種を栽培すれば、アワノメイガによる収量の低下は避けられるようになります。
[除草剤耐性作物]
雑草による収量の低下や雑草種子の混入による収穫物の品質低下(ナタネの場合)を避けるには、除草剤の散布が必要です。今までは、作物に被害を与えず他の全ての雑草が枯れるような除草剤はなかったので、特定の雑草を枯らす除草剤(選択性除草剤)を何種類も組み合わせて何回も施用するしかなく、重労働を強いられ、除草剤の使用にともなう費用がかさんでい
ました。しかし遺伝子組換えにより、除草剤耐性品種が出たので、雑草全てを枯らす除草剤 (非選択性除草剤)を使用することが出来るようになりました。今回、耐性品種が作られた非選択性除草剤(ラウンドアップやバスタなどの商品名で販売されています)は作物の生育初期ないし中期に1〜2度散布すればよいので経済的です。また環境中で速やかに水と二酸化炭素にまで分解され、作物中や土壌中に残留することがないので、従来の農薬よりも環境に与える影響が少なくなると考えられます。
参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A(日本国際生命科学協会) |
|
|
Q40. |
遺伝子組換え技術を使った農作物は食糧の生産と供給にどんなメリットがあるのですか。 |
|
|
|
|
食品原料が安定的に供給されることが期待できます。
国連の世界人口予測によれば、現在60億人といわれている世界人口は、2000年には62億人、2050年には98億人になると推計されています。またアジア地域の経済成長に伴い、特に中国において穀物中心から肉食中心に食生活が変化し、急激な飼料用作物の需要増加が起こりつつあり、21世紀の初めに世界規模で食糧不足が起こると予測されており、食糧保全の道を探る緊急性が指摘されています1)2) 。日本の場合、現在、穀類の自給率は30%を割り、不足分を輸入しています。(表1,2)
今までは食糧増産に関しては、耕地面積を拡大したり高収量品種を栽培することで対処してきました。しかし耕作可能な土地は既にほとんど耕地となっており、耕地面積の拡大はあまり望
めません。工業化が進んでいる地域では耕地の農業以外の用途への転用も起こっています。すなわち、人口増加に伴って人口1人当たりの耕地面積は減少する一方です。1950年から1990年にかけて単位面積当たりの穀類生産は飛躍的に増大しました。しかし、先進国では化学肥料、農薬の使用は限界に達しています。その一方で発展途上国では砂漠化や農業用水資源の枯渇等により、収量増大は望めないのが現状です1)
。
遺伝子組換え農作物は、効率的な品種改良により、食糧問題を解決するための農業生産性の向上に、大きな期待が寄せられています。害虫抵抗性組換え農作物や除草剤耐性組換え農作物の栽培は、食品原料の安定的な供給に寄与すること、持続的な農業を可能にすることから、これらの作物は食糧の安定的な生産と供給にメリットがあると考えられます。
表1 世界の大豆生産量および輸出入量 上位四カ国
(単位:千t ) |
国名 |
生産量*(%) |
|
国名 |
輸出*(%) |
|
国名 |
輸入*(%) |
米国 |
64.840(49.3) |
米国 |
24,000 (65.0 ) |
EU |
15,200(41.7) |
ブラジル |
26,800 (20.4) |
ブラジル |
8,420(22.8) |
日本 |
5,040(13.8) |
中国 |
13,220(10.0) |
アルゼンチン |
87,50(2.0) |
台湾 |
2,630(7.2) |
アルゼンチン |
11,200(8.5) |
|
|
旧ソ連 |
2,140(0.4) |
世界計 |
131,640 |
世界計 |
36,950 |
世界計 |
36,440 |
アグロトレード・ハンドブック'98(JETRO)より
*1996/1997(年度は10月〜9月)
表2 世界のトウモロコシ生産量および輸出入量 上位四カ国
(単位:千t ) |
国名 |
生産量*(%) |
|
国名 |
輸出**(%) |
|
国名 |
輸入**(%) |
米国 |
187,300(36.4) |
米国 |
40,365(58.8) |
日本 |
16,863(24.5) |
中国 |
111,990(21.8) |
中国 |
11,098(16.2) |
韓国 |
6,207(9.0) |
ブラジル |
36,276(7.1) |
フランス |
7,632(11.1) |
台湾 |
5,466(8.0) |
メキシコ |
16,187(7.1) |
アルゼンチン |
4,871(7.1) |
ロシア |
ロシア |
世界計 |
131.640 |
世界計 |
36,950 |
世界計 |
36,440 |
FAO 貿易年鑑より、*1995、**19931)島本功、植物バイオサイエンスと21世紀の食糧・環境:科学と生物、Vol.35(3)pp 225-228(1997)
2)森島賢、金井道夫、大賀圭治、小山修、中川光弘:世界は飢えるか−食糧需要長期展望の検証、農山漁村文化協会(1995) |
|
|
Q41. |
遺伝子組換え技術を農林水産業や食品産業で使うとどんなメリットがあるのですか。 |
|
|
|
|
農林水産業・食品産業等における遺伝子組換え技術は、画期的な新品種の作出、生産工程の効率化等といった私達の身近な分野への貢献はもちろんのこと、21世紀半ばの人口100億人時代の食糧問題、地球環境問題等を解決するためのキーテクノロジーとしても期待されています。
その他の例としては、遺伝子組換え技術の利用により、ある生物から有用な遺伝子だけを取り出し、他の生物に導入することで、いままでにはできなかった品種改良を行うことができます。農作物を利用して自然の状態で分解するプラスチック製品を作ることやエネルギー資源として用いるなど、これまでと全く異なった農作物の利用形態を生み出す上でも有効です。
具体的には、遺伝子組換え技術は、次のような課題への対応を可能にする技術と言えます。
- 消費者ニーズに沿った農林水産物・食品の生産(→Q38)
栄養成分や機能性成分(抗ガン効果等)に富む農作物、日持ちの良い農作物、アレルギー 原因物質を除いた食品の生産
- 生産力の飛躍的向上による食糧問題解決への貢献(→Q40)
超多収農作物、低温・乾燥・塩害などの不良環境や病虫害に強い農作物の開発
- 環境・資源問題の解決への貢献(→Q73〜77)
生分解性プラスチック、微生物による環境浄化、病虫害抵抗性を与えることによる農薬使用量の減少等
参考資料:
組換え農作物早わかりQ&A(農林水産省農林水産技術会議事務局) |
|
|
Q42. |
遺伝子組換え農作物は栽培コストが安くなるといわれていますが、その分、農作物の価格は安くなるのですか。 |
|
|
|
|
栽培コストが安くなれば価格への反映が期待されます。しかし、穀物の価格は米国シカゴの商品取引所で決まるので、すぐに必ず安くなるとは言えません。
大豆、トウモロコシ等の価格はシカゴの商品取引所で需要と供給のバランスなどを考慮して決まりますので、栽培コストが安くなっても、必ずしもそれが最終価格に反映されるとは言えません。需要と供給のバランスによる経済的要因の方が栽培コストよりも価格に与える影響が大きいのです。
しかし、1) 害虫抵抗性遺伝子組換え農作物は特定の害虫のみを防除し、益虫を減少させることがないので、生態系に対する影響が少ないこと、2) 除草剤耐性遺伝子組換え農作物は不耕起栽培を可能にすることにより、土壌の流亡を防いで農地を保全し、持続的な農業を可能にします。
したがって長期的にみれば、世界的な凶作による食糧危機の危険性を少なくし、 食糧の安定供給に貢献することによって、品不足による価格高騰の危険性を減らすので、作物の価格安定に役立つと思われます。
(用語) |
1.不耕起栽培 |
土地を耕さない農法のことをいいます。畑作農業を基本とする海外では、耕作にともなって肥沃な表土が失われ、土壌が浸食されという問題が発生しています。不耕起栽培は、土を耕さないので土壌の浸食防止に有効です。 |
参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A(日本国際生命科学協会) |
|