ひとりの人間の遺伝子は、両親から半分ずつ受け継ぎます。
その際、染色体の組み合わせにはほとんど無限の組み合わせがあり、たとえ兄弟でも異なる個性が生まれることになるのです。

ひとりひとりの遺伝子の違いはわずか
 走るのが速い人、力が強い人、目の青い人や茶色い人――わたしたちの回りには、さまざまな個性を持った人がいます。こうした個性の多くは両親から受け継いだDNAが関係しています。ひとりひとりのDNAに書かれている遺伝子は異なっていますが、実はその違いはほんのわずかしかありません。チンパンジーでさえ、その遺伝子の約98%が人間と同じ遺伝子です。
チンパンジーの遺伝子の98%は人間と同じ。
 遺伝子から生命の共通性を探る研究も進んでいます。たとえばショウジョウバエの体をつくる「ホメオボックス」*という遺伝子は、人間と共通していることがわかっています。ほんのわずかな違いが、すべての生物の多様な個性を生んでいる。これが遺伝子のとても不思議な特徴です。

母親だけから受けつぐ特殊な遺伝
 遺伝子そのものにも特殊な機能を持っているものがあります。それが細胞核以外に存在する唯一のDNAであるミトコンドリアDNAです。
 ミトコンドリアDNAは細胞内に数百から数千個あり、らせん構造ではなく環状になっています。その一部分が生きるためのエネルギー源となるATPという物質をつくる働きをになっています。
 通常の遺伝子が父母両方の性質を受け継いでいるのに対して、ミトコンドリアDNAは母親からの性質だけしか伝えません。ミトコンドリアDNAによって母親からしか遺伝しない身体的な特徴があることも確認されています。通常、この遺伝は母性遺伝と呼ばれています。

兄弟でも遺伝子は異なる
 人間の細胞の中には23組・46本の染色体がありますが、精子と卵子(生殖細胞)には染色体が半分の23本しかありません。つまり、精子と卵子が結合して46本になるようになっているのです。
 これは染色体に含まれている遺伝子情報も、父母から半分ずつ均等に受け継いでいることを意味します。しかし、精子と卵子の遺伝子の組み合わせは無限にあるので、同じ両親から生まれた兄弟がまったく同じ遺伝子になる確率はほぼゼロといえるでしょう。

遺伝子にも強弱がある
 父母から受け継いだ遺伝子のうち、同じ部位に関して両方の特色が同時に出てくることはほとんどありません。強い影響力を持つ遺伝子の性質が現れることになります。
 たとえば、お父さんの髪の色が黒で、お母さんが茶色がかっていたら、黒になる確率が高いようです。この場合、髪の色に関して、父方が優性遺伝、母方が劣性遺伝と呼びます。「優劣」という言葉は使っていますが、遺伝的に優れているということではありません。意味合いとしては「強弱」と考えるとわかりやすいでしょう。
 優性・劣性遺伝を学ぶのにわかりやすい例が、血液型のABO方式です。血液型の遺伝では、父母から1つずつ性質をもらうのですが、図にあるように、A型とB型は優性、O型は劣性のため、O型になるのはO同士の組み合わせのときだけになります。

血液型はこうして決まる
A型とB型の両親から生まれた子は?
A型 
AA型
AO型



子供がもらう遺伝子
 B型
A A A O
BB








B AB AB AB BO
B AB AB AB BO
BO
B AB AB BO BO
O AO AO AB OO

Oの遺伝子は劣性なので両親からOの遺伝子をもらったときだけに生まれた子供はO型になる。
Aの遺伝子、Bの遺伝子は優性なので、AO、BOはそれぞれA型、B型になる。
上の4匹の犬が受けいでいる優性、
劣性の遺伝子はなんだろう。

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