DNAは細胞の寿命を決めたり、不必要な細胞を死滅させたりする機能や、RNAという物質などと連携してタンパク質を合成する働きも持っています。また、DNAが突発的に変化して形態などが大きく変わることを突然変異といいます。

細胞の寿命は遺伝子が決める
 これまで紹介してきた遺伝以外にも、遺伝子はわたしたちの体を実に合理的に機能させています。たとえば、遺伝子は細胞が分裂する回数を決定する役目も持っています。
 細胞分裂のとき、新たに生まれた細胞の成分は基本的に元の細胞と同じ構成になります。しかし、遺伝子の特定の部分だけは分裂するたびに短くなっていき、それがなくなると細胞はこれ以上分裂しません。つまり、細胞の死は遺伝子が決めているのです。

突然変異で生物は進化する
 子孫に遺伝情報を伝えるのがDNAですから、その情報は“絶対不変”なのかといえば、必ずしもそうではありません。たとえば、緑色のリンゴから赤いリンゴが生まれる「突然変異」という現象があります。これはDNAの変化が原因とされています。
 そして環境により適応した形質をもった種が繁栄していきます。
 見た目が変わるような大きな突然変異は、精子や卵子などの生殖細胞にDNAの変化が起きたときに発生します。生物がさまざまな形で進化してきたのも、生殖細胞内でのDNAの突然変異が大きな影響を及ぼしたものと考えられています。

タンパク質の合成も遺伝子の役目
 細胞の複製と並ぶDNAの大きな働きが、わたしたちが生きていくために不可欠なタンパク質の合成です。DNAの上にタンパク質の設計図が書かれていて、その指示にしたがって必要なタンパク質がつくられます。
 実際にタンパク質をつくるのは細胞核の外にあるリボゾームという器官です。細胞がタンパク質を合成するとき、まずその遺伝子情報がリボゾームが使いやすい形に書き換えられ、RNA(リボ核酸)*がつくられます。RNAは、DNAから必要な部分だけを写し取ったものと考えてよいでしょう。このRNAが核から外に出て、リボゾームに指示を伝えるのです。このRNAをその機能から「メッセンジャーRNA」と呼びます。

細胞の死にかたは2種類ある

遺伝子がわざと細胞を殺す?

アポトーシスの働きで、成長とともにしっぽが消える。

 なかには、寿命がまだ残っているのに、遺伝子によって半ば強制的に死を迎えさせられる細胞もあります。その例を、人間のお腹のなかに宿った赤ちゃんに見ることができます。胎児はごく最初の段階では指の間に水かきがありますが、やがて水かきの細胞だけが遺伝子の命令で死を迎え、指が形づくられていきます。つまり、人体には細胞の死によって不要なものを排除し、新たな機能を生み出すというシステムが存在しているというわけです。
 また、ウィルスに感染した細胞やガン細胞などが死亡する例も確認されています。この「細胞が消えていくメカニズム」がもっと深くわかれば、医学が大きく進歩するのは間違いないでしょう。

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