細胞の中心にある“核”のなかに遺伝子があります。
遺伝子は4つの特殊な物質を組み合わせた文字で遺伝子情報を表現しています。その研究が進むにつれて、検討しなければならない新しい問題も生じてきました。

細胞の中心にある遺伝子

2重らせん構造
(イメージCG)
 わたしたち一人一人の体は、遺伝によって両親から体格や体質などの特徴を受け継いでいます。お父さんやお母さんに顔つきや体つきが似ているのはこのためです。
 この遺伝に重要な役目を果たしているのが遺伝子です。遺伝子は細胞の中心にある核という入れ物のなかにあります。
 細胞核には糸状の物質DNA*が折り畳まれて入っていて、その一部が遺伝子として機能しています。ヒトのDNAをまっすぐに伸ばすと2mもの長さに達します。遺伝子が含まれているのはそのうちの約3%〜5%程度にすぎません。残りの95%〜97%はどのような機能を持っているのか、まだよくわかっていません。
 DNAはらせん階段のような2つのひもでつくられているので、「2重らせん構造」と呼ばれています。

暗号文字が大切な情報を伝える
 遺伝子の上に書かれている遺伝子情報は、一種の暗号文字によって書かれています。
 遺伝子には塩基というA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4つの物質があり、これらの並び方でさまざまな形質を表現しています。人体のA、T、G、Cの数は、およそ30億文字対にものぼります。わたしたちの体にはこのように膨大な情報が含まれているのです。
 A、T、G、Cは、3文字でひとつのアミノ酸を表す暗号文字になっています。
 DNAに保存された遺伝子情報は、必要なときに読み出されて、アミノ酸からタンパク質などを合成するために使われます。タンパク質は、筋肉やホルモンなどをつくる機能をもっており、わたしたちが生きていく上で欠かせない物質です。
 遺伝子は、遺伝に関する情報を記録し伝達するだけでなく、生命活動の維持、種の保存という重要な役割もになっているのです。


遺伝子を見ればわたしの体がわかる
 遺伝子の情報は個人によって異なっていますが、実はその違いは微々たるものでしかありません。また、他の生物との違いもわずかで、ヒトの遺伝子とチンパンジーの遺伝子とは98%が同じです。このわずかな差が多様な個性を生むのですから、遺伝子はほんとうに不思議なものです。
 現在、わたしたちの個性を決定づける遺伝子の研究は飛躍的なスピードで進められています。また日常生活に、その成果が活かされる日も近いでしょう。
 その反面、個人のプライバシーをどう守るかなど、新しい問題も明らかになってきました。そして、遺伝子情報の正しい活用についてさまざまな立場の人たちが議論を重ねています。

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