【ニュースリリース】第6回「バイオインダストリー奨励賞」受賞者決定!
一般財団法人バイオインダストリー協会
第6回「バイオインダストリー奨励賞」受賞者決定!
(一財)バイオインダストリー協会(会長:阿部 啓子)は、第6回「バイオインダストリー奨励賞」受賞者11名を、下記のように決定しました。
「バイオインダストリー奨励賞」は、2017年、(一財)バイオインダストリー協会が30周年を迎えるのを機に、次の30年を見据えて"最先端の研究が世界を創る-バイオテクノロジーの新時代-"をスローガンに、バイオインダストリー大賞と共にスタートしました。「奨励賞」は、バイオサイエンス、バイオテクノロジーに関連する応用を指向した研究に携わる有望な若手研究者とその業績を表彰するものです。
受賞者の選考は、千葉大学 大学院工学研究院 教授、関 実 氏を選考委員長とする24名の委員からなる選考委員会により厳正に行われました。受賞者にはそれぞれ副賞30万円が授与されます。
なお、表彰式・受賞記念講演会は来たる10月12日(水)、国際的なバイオイベント"BioJapan 2022"の会場(パシフィコ横浜)にて行われます。詳細につきましては、追ってご案内いたします。
バイオインダストリー奨励賞(11名)(五十音順、年齢は2022.4.1現在)
受賞者 | 所属・役職 | 年齢 | 受賞研究課題 |
市橋 伯一 | 東京大学 大学院総合文化研究科 教授 | 43 | 細胞外で複製し進化する人工ゲノムDNAの開発 |
簡 梅芳 | 東北大学 大学院環境科学研究科 助教 | 42 | 生物学的環境技術の効率化に寄与する生物間相互作用の解明と応用展開 |
白井 智量 | 理化学研究所 環境資源科学研究センター 上級研究員 | 43 | 人工代謝経路の設計技術を用いた有用化合物のバイオ生産に関する研究 |
杉山 弘和 | 東京大学 大学院工学系研究科 教授 | 43 | 抗体・幹細胞製造プロセスのデジタル設計を支援するシミュレーション技術 |
瀧澤 文雄 | 福井県立大学 海洋生物資源学部 准教授 | 42 | 魚類特有のIgT抗体による粘膜免疫制御機構の解明 |
田中 祐圭 | 東京工業大学 物質理工学院 准教授 | 41 | バイオミネラリゼーションによる機能性ナノ粒子の精密グリーン合成 |
藤田 雄 | 東京慈恵会医科大学 エクソソーム創薬研究講座 講師 | 40 | 細胞外小胞・エクソソーム治療用製剤の開発と社会実装 |
星野 歩子 | 東京工業大学 生命理工学院 准教授 | 39 | 臓器特異的転移を司るがん細胞由来エクソソームを用いた転移抑制治療と予測診断の開発 |
村山 正宜 | 理化学研究所 脳神経科学研究センター チームリーダー | 44 | 広視野・高速・高解像度2光子顕微鏡の開発と生体脳への応用 |
吉見 昭秀 | 国立がん研究センター 研究所 がんRNA研究ユニット 独立ユニット長 | 44 | 次世代核酸医薬による新規がん治療法の展開 |
渡邉 力也 | 理化学研究所 開拓研究本部 主任研究員 | 40 | 新型コロナウイルスの世界最速デジタル検出技術の開発 |
奨励賞選考委員会(五十音順、敬称略 )
(委員長)
関 実 千葉大学 大学院工学研究院 教授
(副委員長)
小川 順 京都大学 大学院農学研究科 教授
柴田 大輔 京都大学 エネルギー理工学研究所 特任教授
長棟 輝行 東京大学 名誉教授
(委員)
飯島 陽子 工学院大学 先進工学部 応用化学科 教授
石原 健一 帝人㈱ マテリアル事業CSR・品質保証部 部長
近江谷克裕 産業技術総合研究所 首席研究員
大西 康夫 東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授
神田 智正 アサヒクオリティーアンドイノベーションズ㈱ 顧問
木野 邦器 早稲田大学 先進理工学部 応用化学科 教授
河内 智子 キッコーマン㈱ 研究開発本部
鮫島 正浩 信州大学 工学部 特任教授、東京大学 名誉教授
篠崎 和子 東京農業大学 総合研究所 教授、東京大学 名誉教授
柴田 浩志 サントリーウエルネス㈱ 取締役専務執行役員
瀧村 靖 花王㈱ 研究開発部門 生物科学研究所 所長
竹山 春子 早稲田大学 先進理工学部 生命医科学科 教授
津本 浩平 東京大学 大学院工学系研究科・医科学研究所 教授
野村 武彦 住友ファーマ㈱ 理事、フロンティア事業推進室長
藤井 智幸 東北大学 大学院農学研究科 教授
松村 康生 京都大学 生存圏研究所 特任教授
水川 貴史 シオノギファーマ㈱ 経営戦略本部長
峰野 純一 タカラバイオ㈱ 取締役副社長執行役員
安田 磨理 三菱ケミカルアグリドリーム㈱ 農業資材営業部
山内理夏子 元 田辺三菱製薬㈱
バイオインダストリー奨励賞・選評 (五十音順)
◆受賞者1
市橋 伯一(いちはし のりかず)東京大学 大学院総合文化研究科 教授
研究テーマ | 細胞外で複製し進化する人工ゲノムDNAの開発 |
選評 | 無細胞系でのシンプルなシステムでゲノムの複製と進化を両立させる方法を考案し、独創性の高い研究を行ってきた。自律的な増殖を可能とする人工細胞の創生など、技術展開の方向性を明確にし、発展的な取り組みを開始している。修飾核酸を取り込みやすい酵素の構築などは極めて有効な技術であり、核酸医薬領域への応用が期待できる。今後もゲノム関連技術開発を牽引する活躍が期待される。 |
◆受賞者2
簡 梅芳(かん ばいほう)東北大学 大学院環境科学研究科 助教
研究テーマ | 生物学的環境技術の効率化に寄与する生物間相互作用の解明と応用展開 |
選評 | 土壌中に含まれる有害物質であるヒ素を高濃度で蓄積する植物を材料として研究を行い、根圏の微生物との相互作用がヒ素吸収に貢献していることを解明し、微生物補助型ファイトレメディエーション技術を提案している。さらに、急性毒性を示す多環芳香族炭化水素や水銀などの有害金属の除去にも研究を展開し実績を挙げている。今後も生物的環境制御技術開発分野での活躍が大いに期待される。 |
◆受賞者3
白井 智量(しらい ともかず)理化学研究所 環境資源科学研究センター 上級研究員
研究テーマ | 人工代謝経路の設計技術を用いた有用化合物のバイオ生産に関する研究 |
選評 | 合成生物学を情報科学的観点から牽引する研究を幅広く展開した。合成反応や生産経路を予測設計するツールの開発を行い、実際に人工代謝経路を構築するなど、多くの企業との共同研究を介して本技術の妥当性や有効性を実証している。タイヤ原料となるブタジエンのバイオ生産を達成したことは大きな成果であり、今後のバイオ生産技術開発領域での活躍が大いに期待される。 |
◆受賞者4
杉山 弘和(すぎやま ひろかず)東京大学 大学院工学系研究科 教授
研究テーマ | 抗体・幹細胞製造プロセスのデジタル設計を支援するシミュレーション技術 |
選評 | 抗体医薬品や幹細胞の製造プロセスのデジタル設計を支援する各種シミュレーション技術を開発した。産業ニーズにもマッチし、産業界へのインパクトも大きい独創性に富む研究成果である。本技術により、今後課題となることが予想される細胞製剤の生産条件の検討段階において、試行錯誤的実験やR&Dの効率化・迅速化が期待できる。今後もこの分野を牽引する研究者として活躍が期待される。 |
◆受賞者5
瀧澤 文雄(たきざわ ふみお)福井県立大学 海洋生物資源学部 准教授
研究テーマ | 魚類特有のIgT抗体による粘膜免疫制御機構の解明 |
選評 | 魚類特有の抗体であるIgTに着目し、重要養殖魚種ニジマスのエラにおける抗体応答を解析し、粘膜における病原体排除および常在細菌叢の制御にIgTが必須であることを解明するなど独創性の高い研究を行ってきた。感染症による養殖魚被害が問題となっているが、魚病診断、水産用粘膜ワクチン開発に関して、国際的に水産業界との連携を開始している。今後も水産養殖業における貢献が期待される。 |
◆受賞者6
田中 祐圭(たなか まさよし)東京工業大学 物質理工学院 准教授
研究テーマ | バイオミネラリゼーションによる機能性ナノ粒子の精密グリーン合成 |
選評 | 金属結合性ペプチドを利用し、界面場で金属ナノ粒子の粒子形態制御を行うという、独創性の高い技術を開発した。ペプチドの多様性を利用した多様な形状の金ナノ粒子の合成技術を他の金属にも応用し、磁性合金創製や形状制御に成功した。これらの技術の化学反応触媒、金属資源再利用、医療用途への展開を企画しており、今後もバイオ技術を活用した新規材料開発における活躍が期待される。 |
◆受賞者7
藤田 雄(ふじた ゆう)東京慈恵会医科大学 エクソソーム創薬研究講座 講師
研究テーマ | 細胞外小胞・エクソソーム治療用製剤の開発と社会実装 |
選評 | 気道上皮細胞由来の細胞外小胞の抗老化作用・抗線維化作用を発見し、内包するmiRNAの作用を解明した。さらに、特発性肺線維症に対する臨床グレードの細胞外小胞・エクソソーム治療用製剤の大量製造プロセスを企業と共同で構築し、細胞外小胞治療製剤の早期実用化のための社会実装を進めている。本プロセスの汎用性は高く、今後もこの分野を牽引する研究者として活躍が期待される。 |
◆受賞者8
星野 歩子(ほしの あゆこ)東京工業大学 生命理工学院 准教授
研究テーマ | 研究テーマ:臓器特異的転移を司るがん細胞由来エクソソームを用いた転移抑制治療と予測診断の開発 |
選評 | がん細胞由来のエクソソームが特定の臓器の細胞に侵入して微小環境を形成し、その結果としてがん細胞の臓器特異的転移先が決定されるがん転移機構を世界に先駆けて解明した。がん細胞由来エクソソームを用いた転移抑制治療や臓器特異的なDDSの開発、がん診断マーカーへの活用など、社会実装に向けて卓越した成果を挙げており、今後もこの分野を牽引する研究者として活躍が期待される。 |
◆受賞者9
村山 正宜(むらやま まさのり)理化学研究所 脳神経科学研究センター チームリーダー
研究テーマ | 広視野・高速・高解像度2光子顕微鏡の開発と生体脳への応用 |
選評 | 広視野、高解像度、高速撮像、高感度、無収差を同時に満たす世界初の2光子顕微鏡を企業と共同開発し、これを用いて生きたマウスの脳の多領域にまたがる神経細胞ネットワークの、これまでは不明であった細胞レベルでの機能的構造解明に成功した。この顕微鏡は生命科学分野の様々な生体試料観察に応用できるものであり、今後もこの分野を牽引する研究者として活躍が期待される。 |
◆受賞者10
吉見 昭秀(よしみ あきひで)国立がん研究センター 研究所 がんRNA研究ユニット 独立ユニット長
研究テーマ | 次世代核酸医薬による新規がん治療法の展開 |
選評 | 新規に開発したスプライシング解析技術を各種がん細胞のゲノムDNA塩基配列ビッグデータに適用し、フレームシフトによるスプライシング異常が、がんに高頻度に起こっていることを明らかにした。核酸医薬を用いてスプライシング異常を修正するがん治療法の開発を進めており、今後もこの分野を牽引する研究者として活躍が期待される。 |
◆受賞者11
渡邉 力也(わたなべ りきや)理化学研究所 開拓研究本部 主任研究員
研究テーマ | 新型コロナウイルスの世界最速デジタル検出技術の開発 |
選評 | CRISPR-Cas酵素を用いた標的RNA検出技術とマイクロチップを用いたデジタル1分子計測技術を組み合わせ、新型コロナウイルス由来RNA遺伝子を高感度・高精度・短時間に検出できる革新的技術を開発した。他の1本鎖RNAウイルスや疾患の核酸バイオマーカーの検出にも応用可能な発展性、波及効果が高い技術であり、今後もこの分野を牽引する研究者として活躍が期待される。 |
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