以上のように遺伝子の挿入位置やコピー数の制御はできないが、遺伝子組換え体個々について、現在の科学的な知見に基づいて、挿入部位やコピー数、さらに発現についての正確な情報を得ることは可能である。さらに、挿入部位の周辺のDNAの構造や遺伝子発現について明らかにすることも可能な状況になっている(→Q13)。 したがって、遺伝子組換え植物の実用化にあたっては、遺伝子導入による個々の産物の安全性評価を十分に行うことが重要であると考えられる。現在、遺伝子導入後、それぞれの遺伝子組換え植物の性質が慎重に調べられ、導入した遺伝子が発現していないものや不安定なもの、また間違った遺伝子配列が生じた遺伝子組換え植物は、そのような変異株の単離を目的とする場合以外、排除されている。よって、これまでのところ、予期せぬ影響を及ぼす遺伝子組換え植物が実用化された例は報告されていない。 また、十分な安全性評価に加えて、今後、遺伝子組換え技術そのものの基礎的研究を進めていくことが重要である。技術の進歩により染色体の特定の位置への遺伝子の挿入が可能になれば、これらの不安も払拭されていくと考えられる。
更新日: 2006年10月25日