人間が人間らしく社会生活を営む上で守るべきもの、倫理があります。遺伝子研究などの科学の発展をはじめ、多様な立場で社会が構成されるようになりつつあるいま、科学と倫理のあり方を考えていく必要があります。

「倫理」ってなんだろう?
 人間が人間らしく社会生活を営む上で守るべきものがあります。道徳は人間が「善を行い、悪を行わない」で生きていくための内面的な「良心」として働いています。一方、法律や制度は外面的な社会的規制であり、罰則などの「力」によってそれを守ることが義務付けられています。人間らしい社会生活は道徳、法律ならびに倫理によって一定の秩序が保たれています。
 倫理は、さまざまな学問に深く関わり、「なんのために、なにを、どのような方法で」研究するかを根底から左右しているといえます。たとえば、かつて物理学の研究は原子爆弾を生み出しました。そのため、物理学者の倫理が問われたこともあります。

倫理は人がつくる
 たとえば国際化によってさまざまな人たちがひとつの社会に暮らすようになれば、おのずと倫理も変わっていきます。加速度的に進む情報化も、私たちの社会の仕組みを変え、倫理にも影響を与えています。このように、21世紀の社会には、倫理を考え直す要因が数多くあります。
 遺伝子研究を含む生命科学の発展も、倫理を考え直す大きな要因のひとつです。
 倫理について話し合ってみよう

生きるための科学と倫理
 急速に科学技術が発展する中で人間そのものをどう捉えていくかという視点は先送りされてきたように思われます。
 近代の産業経済や科学技術は、主に物質生産を中心に発達してきただけにおのずと人間の内的な世界については取り残されてきたともいえるでしょう。
 しかし、生命科学の発展は、この状況を大きく変えています。生命現象そのものに迫っていこうとしているからです。

生命倫理
 生命科学の発展は、たとえばクローン人間に代表されるように、「人間が生命そのものにどこまで関わっていいのか」という問いをなげかけ、このような問いに対して、さまざまな立場から議論されています。
 生命倫理*で問われていることには、ただちに結論を出すのがむずかしいものも多くあります。マスコミによく取り上げられているもの、たとえば、輸血、体外受精、脳死などや、遺伝子治療、再生医療といった新しい分野も含まれます。

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