個別技術紹介

Individual Technology

輸送体探索技術


阿部 敬悦
東北大学大学院農学研究科

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要旨

細胞内での物質変換には基質の取り込みが必要である。また、生産物は細胞外に排出されなければ、培地中に回収することができない。本技術は、物質生産の効率化に重要な化合物輸送体の探索技術である。

研究の内容

微生物等を用いて化合物を生産する場合、特に膜不透過性の化合物をターゲットとする場合は、生産物の宿主細胞外への排出は生産の効率化を左右する。仮に、生産物の細胞外への排出が滞ると、生産物が細胞内に蓄積し、負のフィードバックが起こり生合成反応を阻害される。このような場合、ターゲットとする化合物を細胞外に適切に輸送する『輸送体』の細胞膜上での発現が解決策となる。本プロジェクトでは(国研)産業技術総合研究所(産総研)の有する情報解析技術と東北大学で開発された輸送体探索技術との融合により、従来の輸送体探索に要する時間を大幅に短縮し、ターゲット化合物を輸送する輸送体の探索技術を開発した。

産業界などへのアピールポイント

近年のゲノム解析の進展により生物のゲノム上には、300~1,000個の輸送体をコードする遺伝子が存在する明らかにされている。一方で、多くの輸送体遺伝子の機能は未知のまま残され、ターゲットとする化合物の排出輸送体を論文情報やゲノム情報を元に調べても、対象の輸送体に辿り着かない場合が多いのが現状である。本技術は、ターゲット化合物の輸送体探索を簡略化し、物質生産の効率化を実現に向けた技術である。

参考文献

1) 七谷圭ら: 第12章 微生物の膜輸送体探索と産業利用― 輸送工学の幕開け ―, スマートセルインダストリー, CMC出版 (2018)

2) A. Sasahara et al. : J. Biol. Chem., 286, 29044-29052 (2011)

関連特許

特願2018-087700:所定の化合物に対する膜タンパク質のスクリーニング方法及び所定の化合物の生産方法, 2018年4月27日, 発明者:七谷圭ら, 出願人:国立大学法人 東北大学

最終更新日:2022年11月14日 12:31