導入遺伝子配列設計技術
亀田 倫史
国立研究開発法人産業技術総合研究所
個別技術紹介
亀田 倫史
国立研究開発法人産業技術総合研究所
mRNA二次構造と、コドン使用頻度に着目した遺伝子配列改変法を用いることにより、微生物によるタンパク質発現量を制御(増大・減少)させることができる
本研究では、まず、(国研)産業技術総合研究所が所有するRhodococcus属放線菌におけるタンパク質生産実験データの情報解析を行った。このタンパク質生産実験データとは、204個の遺伝子について、遺伝子配列とタンパク質生産量との関係が紐付いたデータとなっている。具体的には、遺伝子配列から様々な配列特徴量の計算を行い、タンパク質発現量と配列特徴量の相関を評価した。
その結果、遺伝子配列の先頭部分におけるmRNAの2次構造形成度およびコドン使用頻度が、タンパク質生産量と高い相関を示すことが明らかとなった。
この結果に基づき、2次構造を取りにくく、かつ、コドン使用頻度が高くなるように遺伝子配列を設計する 新しいコドン最適化手法を開発した。
本手法を用いることで、成功率75%という高い確率で、タンパク質の発現量を向上させることができることを確認している。
本手法はRhodococcus属放線菌において実証したものだが1)、放線菌以外の様々な微生物宿主における物質生産にも応用可能であり、大腸菌、コリネ型細菌などで、実際の効果を確認している。
また、膜タンパク質などの発現な困難なターゲットでの高発現化にも成功している。
本手法は、遺伝子配列の5'末端の先頭部分のみの配列を改変する手法であるため、コスト的にも安価に合成することが可能である。
1) Y. Saito et al.: Sci. Rep., 9(1), 8338 (2019)
最終更新日:2022年11月14日 12:33