技術活用事例

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微生物を用いたパプリカ由来カロテノイドの新規生産法

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使用した技術

文献等からの知識抽出・学習技術(機械学習を活用した酵素提案)

実施機関

江崎グリコ(株)、(国研)産業技術総合研究所、京都大学、石川県立大学

研究開発のゴール

パプリカ由来の希少カロテノイドを高効率に生産できる微生物を開発する。

目的

 食品用色素には天然色素と合成色素が存在するが、近年、天然色素のニーズが急激に上昇している。現在、天然色素の原料となる植物の調達に関しては、その大半を中国に依存しているのが現状である。原料を植物に頼らず微生物において色素生産が実現できれば、原料調達の問題が回避でき、日本企業が世界をリードできると考えられる。一方、カロテノイド色素は、可視光、紫外線の吸収機能、活性酸素の消去機能、完全な共役電子系、などの特徴を有する機能材料であり、色素としての利用以外に、生理機能素材としての健康食品、化粧品への利用が世界的に進むと考えられている。
 本研究では、パプリカ由来希少カロテノイドの微生物生産実現のため、「カロテノイド代謝工学」(ウエット技術)と「機械学習情報解析」(ドライ技術)を組み合わせ、実用的なカロテノイド生産系を構築する。

結果・成果

①カロテノイドB産生微生物の構築、改良(含有率の向上)

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 機械学習情報解析の結果提供された約7,000種類の候補遺伝子から系統樹分析も併用して候補遺伝子を絞り込み、約200種類の候補遺伝子をそれぞれ大腸菌に実装し、カロテノイドBの生産割合を測定した。その結果、カロテノイドBの生産割合を当初の21.4%から45.7%に上昇した大腸菌株を構築することができた。

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 ②カロテノイド生産性の向上
 ①で構築したカロテノイドB高生産大腸菌株のミニジャーにおける培養諸条件を検討した(温度、通気量、攪拌速度、誘導剤添加量、添加タイミング等)。さらに、グルコースを唯一の炭素源とする流加培養を行い、菌体増殖フェーズと物質生産フェーズの制御を行ったところ最大で大腸菌培養液当たり、20.1㎎/Lのカロテノイド生産性を示した。

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この研究で得られたデータ

プロジェクト(微生物を用いたパプリカ由来カロテノイドの新規生産法の有効性検証
 - NITE生物資源データプラットフォーム(DBRP) から提供(制限公開データを含みます)

参考文献

1) Takemura, M. et al.: Pathway engineering for efficient biosynthesis of violaxanthin in Escherichia coli, Appl Microbiol and Biotechnol, 103(23-24), 9393~9399(2019)
2) Araki, M. et al.: Exploration and evaluation of machine learning-based models for predicting enzymatic reactions, J. Chem. Inf. Model., 60(3), 1833~1843 (2020)

最終更新日:2022年11月14日 12:39