2023 VOL.81 NO.5
巻頭言
・大変革期を迎えて(吉田 稔)
目で見るバイオ
・紫外線を赤色光に変換するフィルムによる植物の成長促進効果(鈴木 卓・斎藤秀之・庄司 淳・長谷川靖哉)
解説
・葉緑体の進化を模倣した外膜剥離シアノバクテリアによる農作物生産向上(児島征司・草間翔子)
要旨
外膜を細胞壁から剥離させたシアノバクテリアが、光合成由来の還元力を細胞外に放出しつつ、農作物を収穫増加させる効果を持つ生体分子群を培養上清に生成することを発見し、CO2活用と農作物生産力向上の両立への応用が拓けた。
・天然ポリカチオン性イソペプチドを用いた細胞内デリバリー技術(濱野吉十)
要旨
細菌の一種である放線菌は、ポリカチオン性のイソペプチドを二次代謝産物として生産する。本稿では、その代表例であるε-poly-L-α-lysineとε-oligo-L-β-lysine の細胞膜透過性とそれを利用したタンパク質の細胞内デリバリーについて解説する。
トピックス
・二次代謝酵素から一次代謝酵素への進化モデル(川口 潤・和地正明)
・サンゴ共生藻の細胞表面に生息する色素細菌が光ストレスを軽減する(高木俊幸)
・甘味受容体・うま味受容体を介した塩化物イオンの感知(山下敦子)
・抗PD-1抗体による老化細胞の除去(中野泰博・城村由和)
・縮合型タンニンにより凝集したタンパク質の構造特性(山内恒生)
・ユウロピウム錯体塗布農業用フィルムの被覆による植物の成長促進(鈴木 卓・斎藤秀之・庄司 淳・長谷川靖哉)
・ジャガイモシストセンチュウ孵化促進物質「ソラノエクレピンB」の発見(秋山遼太・水谷正治)
・青葉アルコールの配糖化を介したトマトのハスモンヨトウ幼虫防御機構(高林純示・杉本貢一・小埜栄一郎・大西利幸)
・高等生物のゲノム再構築を可能にするUKiS法の開発(相澤康則)
・大腸菌への人工生合成経路の導入によるラズベリーケトン生産(桝尾俊介・薄井くるみ・高谷直樹)
バイオの窓
・多様化・複雑化する創薬モダリティへの対応(児玉達史)
特集
この素材!この技術!が世の流れを変えた!
・高菌数・高密度化によるL.パラカゼイ・シロタ株の新たな機能発現(加藤豪人)
・健康食品の黎明期を築く~セサミン開発(秋元健吾)
バイオインダストリー奨励賞受賞業績
・人工代謝経路の設計技術を用いた有用化合物のバイオ生産に関する研究(白井智量)
・細胞外小胞・エクソソーム治療用製剤の開発と社会実装(藤田 雄)
・臓器特異的転移をつかさどるがん細胞由来エクソソームを用いた転移抑制治療と予測診断の開発(星野歩子)
産業と行政
AMED「RNA標的創薬技術開発事業」から創薬を目指して(2)
・核酸医薬総論と革新的次世代核酸医薬(和田猛)
Food Bio Plus研究会がめざす課題解決の方向性(3)
・昆虫由来タンパク質の受容拡大の方策を考える~消費者に商品を届けるプロセスの改善(飯島明宏)
・細胞性食品(いわゆる「培養肉」)のルール形成の国内外の動向について(吉富愛望アビガイル)
・遺伝子改変藻類の屋外開放培養に対する行政見解について(齋藤 猛)
高度バイオ製造人材育成はわが国の喫緊の課題(3)
・資本(新技術)と技能(高度技術者)間の補完性からAI・DXのインパクトを考える(松繁寿和)
・What Skills Are Needed in Order to Digitalize Biopharma R&D(近藤俊哉)
・若手バイオ製造人財の旺盛な「増殖」を願って(宮田雄一郎)
・ダイナモ人材小委員会に参加して(内田美帆)
・「専門家が注目する科学技術に関するアンケート調査」から見るバイオサイエンス(黒木優太郎)
国際動向
・食と農業の未来 2050年に人類は何を食べているか?(坂元雄二・竹山春子)
・BIO International Convention 2023 Boston参加報告およびボストンのエコシステム(塚本芳昭・森下節夫・内田 力・高倉 薫)