2023 VOL.81 NO.3
巻頭言
・バイオものづくりを我が国の基幹産業へ(長谷川史彦)
目で見るバイオ
・細胞外の情報伝達分子のリアルタイムイメージング(稲生大輔)
解説
・安定同位体を用いた窒素循環に関わる微生物代謝活性評価(押木 守)
要旨
現代の窒素循環は人間活動により著しく加速され、持続可能性から乖離した状態にある。本稿では窒素循環の現状と微生物の関わりを紹介した後、微生物の窒素代謝活性を安定同位体標識化合物を用いて調査する技術を紹介する。
・イメージング質量分析による食品機能性成分の可視化(平 修)
要旨
「見る」ことは、「食べること」と「体に及ぼす影響」を分かりやすくしてくれる。本稿では、イメージング質量分析が食品機能分析にどのように寄与できるのかを解説するとともに、食品自体の機能性成分の可視化と、食べた側の動態について紹介したい。
・脳梗塞後の炎症と神経修復の機序(七田 崇)
要旨
脳卒中に対する有効な治療薬はいまだに開発されていない。最近では、脳にも回復機序が存在することが明らかになり始めており、脳損傷後の炎症から修復へと移行するメカニズムの解明から、機能回復を促進する治療薬開発に期待が高まっている。
・リボヌクレアーゼPの多様性・構造基盤と分子進化(寺本岳大・児安剛志・角田佳充)
要旨
生命に必須の前駆体tRNAの5'側余剰配列の除去を行うリボヌクレアーゼPの多様性とダイナミックな分子進化について紹介し、標的RNAを特異的に切断するツールとしての利用の可能性についても紹介する。
トピックス
・クモ糸の構造と力学物性のデータベース化 ─人工クモ糸材料の創出に貢献─(荒川和晴)
・アミノ基を芳香環に導入する酵素の発見(野口智弘・葛山智久)
・生理活性ペプチド ニューロメジンUのマウスとラットでの摂食抑制作用の違い(相澤清香)
・リグニン由来の芳香族化合物からポリマー原料を生産する微生物株の分子育種(園木和典・政井英司)
・タンパク質型蛍光センサーにより見えてきたオキシトシンの脳内動態(稲生大輔)
・空腹時の食餌の匂いがマウスの脂質代謝に影響する(恒枝宏史・笹岡利安)
・ペプチドホルモンとその受容体を介した植物の成長とストレス応答のトレードオフ制御(大西(小川) 真理・松林嘉克)
・ピキア酵母の多重遺伝子欠損による難分泌性抗体タンパク質の生産性向上(伊藤洋一郎・石井 純・近藤昭彦)
・マルトース輸送体の糖選択性からみるビール酵母の適応進化(小埜栄一郎・溝端栄一・畠中治代)
バイオの窓
・バイオ最前線の情報収集 ─編集委員の目利き力─(水光正仁)
産業と行政
高度バイオ製造人材育成はわが国の喫緊の課題(1)
・シリーズの企画にあたって(大政健史)
・医薬品の研究・開発・製造プラットフォーム企業群で働きませんか?(藤澤朋行)
・スーパーバイオDX人材の育て方、育てられ方、活かし方(緒方法親)
Food Bio Plus研究会がめざす課題解決の方向性(1)
・Food Bio Plus研究会設立宣言~「人と社会と地球」の健康を目指して(小川 順)
・健康食材"桜島大根"の基礎研究から始まる地域の活性化(加治屋勝子)
国際動向
・「ポスト2020生物多様性枠組に関する第5回公開作業部会(OEWG-5)」および「生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」参加報告(市原準二・小山直人・野崎恵子)
シリーズ:グローバル連携⑭
・カナダブリティッシュ・コロンビア州のライフサイエンス・クラスター(徳永 陵)
特集
バイオインダストリー奨励賞受賞業績
・抗体・幹細胞製造プロセスのデジタル設計を支援するシミュレーション技術(杉山弘和)
・魚類特有のIgT抗体による粘膜免疫制御機構の解明(瀧澤文雄)
・バイオナノミネラリゼーションによる機能性ナノ粒子のグリーン合成(田中祐圭)
・新型コロナウイルスの世界最速デジタル検出技術の開発(渡邉力也)
この素材!この技術!が世の流れを変えた!
・SDGs社会におけるUmami価値再考(畝山寿之)
JBAニュース
バイオエンジニアリング研究会
・サーモフィッシャーサイエンティフィック社「再生医療クリエイティブ・エクスペリエンス・ラボ(T-CEL)」見学会および講演会報告