■ 生物多様性条約および名古屋議定書への対応 生物多様性条約(CBD)の下では、2050年までに「自然と共生する世界を実現する」というビジョン(中長期目標)が掲げられています。この目標に向け、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では、2020年までのミッション(短期目標)と個別目標(愛知目標)が定められ、世界中で取組まれてきました。しかし、この取組みは2020年までの取組みであることから、現在CBDの下では、2021年以降の取組みである「ポスト2020生物多様性枠組」に関する議論が行われています。 また、CBDおよび名古屋議定書の下では、塩基配列データ等の「デジタル配列情報」(Digital Sequence Information:DSI)に関する議論も行われています。これは、「遺伝資源へのアクセスと利益配分」(Access and Benet-Sharing:ABS)の対象を、「物」である遺伝資源から塩基配列データ等の「情報」にまで拡大しようとするものです。この議論は、現在のバイオサイエンスの潮流や国際塩基配列データベース(INSDC)の「フリーで制限のないアクセスポリシー」に逆行するものであり、CBDの目的である「生物多様性の保全」や「その構成要素の持続可能な利用」を阻害することになるのではないかと危惧されます。また、イノベーションを阻害し、ヒトや動植物の健康や食料安全保障にも大きな影響を及ぼす恐れがあります。 一方、当初2020年10月に予定されていた生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、開催が2021年に延期されています。このため、前述の「ポスト2020生物多様性枠組」や「デジタル配列情報」についても、公式な議論は先送りとなっていますが、2020年には関連するいくつかの非公式会合がオンラインで開催されました。 JBAは、これらの議論は、産業界や学術界はもちろんのこと社会全体に大きな影響を及ぼすと考え、それらの会合に参加し、議論の概要や各国のポジションのとりまとめを行うなどして、日本政府の交渉を支援しています。 JBAでは、オープンセミナーや、企業・大学・研究機関等からの依頼に応じて行う個別セミナー(出前セミナー)で、海外遺伝資源を利用する際の留意点を説明する等、ABSに関する啓発活動を行っています。また、啓発のためのツールとして「遺伝資源へのアクセス手引」を作成し、好評を得ています。 さらに、JBAでは、ABSに関する相談窓口を設け、守秘の下、無償で、企業・大学・研究機関等からの個別の相談に応じています。2020年度の相談件数は2021年3月末現在33件で、2005年に窓口を開設してからの累計件数は約800件に上っています。■ 遺伝資源へのアクセスと利益配分 (Access and Benet-Sharing:ABS)「遺伝資源へのアクセス手引(第2版)」(左)とその英語版(右)相談件数の推移(2021年3月末現在)Infrastructure and EstablishmentJBA _ Activity Report 20201201008060402009008007006005004003002001000200520062007200820092010201120122013201420152016201720182019202015件数累計32生物多様性条約名古屋議定書
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